6月18日晴れ。昨夜遅くにミラノからパリへと移動しました。最高気温は28度の予想で、ミラノに比べて少し涼しいです。先輩の村上はホテル到着後、5時間後にフィレンツェへと旅立ったので、本日は後輩の僕が書かせていただきます。
フィレンツェ、ミラノ、パリの4都市のメンズコレクションを取材しているため、パリはいよいよ最後の都市というわけです。ただ、パリメンズは他の都市よりも日程が倍近くあるのでここからがめちゃくちゃ長い!定期購読者に向けて毎日配信しているデジタルデイリー用のコレクションレビューを始め、日々の原稿がボディーブローのように体にじわじわ効き始めるころですが、そんなことは言ってられません。パリメンズ初日、はりきって行きますよ!
朝イチのショーはメトロでの移動です。特に夏場のパリの地下鉄は結構キツい。中は蒸し暑いわ激しく揺れるわで、乗り物酔いしやすい人にはちょっと辛いかも。僕もかなり酔いやすい体質なので、電車移動やタクシーでの移動が多くなりそうな日は酔い止めを飲んで出掛けます。移動中のメールチェックや原稿もはかどりますからね。
電車に揺られること約20分、本年度の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」ファイナリストにも選ばれた米ブランド「ボーディ(BODE)」のショー会場に到着しました。2016年のブランド設立以来初のランウエイショーでしたが、これがかなり面白かった!チュニックシャツやビーズ刺しゅう、マクラメ編みのトップスなどはエスニックなムードで、とてもアメリカのブランドとは思えません。ほかにも古い漫画のようなタッチのゆるカワなイラストなど要素はてんこ盛りなのに、一つのスタイルへの落とし込むセンスが秀逸です。素直に着てみたくなりました。ミラノメンズの若手ブランドはなかなか厳しかったので、朝からなんだか嬉しい気分。
次の「フィップス」へは大型のプレスバスで移動します。スケジュールに沿って動く場合は本当に便利な移動手段なのですが、ハイヤーで優雅に移動する業界人も多いので、一部からは親しみを込めて“貧乏バス(BB)”と呼ばれています(笑)。でもみんなでワイワイしながら移動するのも楽しいですし、中ではドリンクが配られるなどホスピタリティーもなかなかなんですよ。
「フィップス(PHIPPS)」のショーが30分押しでスタート。こちらも「LVMHプライズ」のファイナリストで評価が高いブランドです。アウトドアの無骨さを今っぽいストリートのムードで押し切ったマッチョなスタイルがたくさん。「ミレー(MILLET)」とのコラボレーションアイテムは、結構本気のスペックっぽいです。アメリカ拠点の「ボーディ」は繊細でヨーロッパっぽいし、フランス拠点の「フィップス」はゴリっとしてアメリカっぽいし、対照的な世界観の「LVMHプライズ」ファイナリスト対決が面白かったです。僕は圧倒的に「ボーディ」派かな。
再び“BB”に揺られて、日本でも人気の「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」の会場に移動。コンコルド広場周辺の大渋滞によって間に合うか微妙でしたが、何とか滑り込みセーフ。前シーズンのショーでは会場内全体にモヤがかかるほどハッパの煙がすごかったのですが(笑)、今シーズンはクリーンでした(たぶん)。服自体はいつものベーシックなストリートウエアだったものの、これまでとはちょっと違うアプローチにもチャレンジしようとする姿勢も見られたのが好感です。
次の「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」はすぐ近くにだったので徒歩で移動。ここへ来て日本のファッション関係者もぐっと増えました。今シーズンは若手スタイリストの姿も何人か見られて、日本のクリエイターも頑張ってるなと励まされました。会場前に着くと、「エトセンス(ETHOSENS)」の橋本唯デザイナーを発見!「勉強するためにショーをいくつか見にきました」と話していたので、もしかしたら海外でのショーを考えているのかな!?「フミト ガンリュウ」のショーはこれまでのミニマル路線から一転、色やパターンが豊富で開放感溢れる気持ちいいコレクションでした。もうすっかりモードなブランドですね。「サロモン(SALOMON)」や「スイコック(SUICOKE)」とのコラボシューズも話題になりそう。
ここでふと朝から何も食べてないことに気づきました。そして気づいた瞬間、空腹感が倍増。次の会場までは徒歩で移動だったので、たまらず道中のブランジェリー「ル・ムーラン・デ・ローザ(LE MOULIN DE ROSA)」でクロワッサンを購入。空腹と激ウマで、丸呑みする勢いでガッつきました。やっぱりコレクション取材中は体力勝負なので、朝食は無理してでも食べないとダメだ……。
日本では陽が傾き始める時間ですが、ヨーロッパのサマータイムはここからが暑さの本番です。「コモン スウェーデン(CMMN SWDN)」の会場は窓がなく、蒸し風呂状態。そんな中、雑誌「センス(SENSE)」を代表してパリに来ている中里俊介副編集長が爽やかに挨拶しに来てくれました。「初めてのパリですし、最初に見た『ヘロン プレストン』では何を見ればいいのかわからずテンパりました(笑)でも、頑張ります!」と力強いお言葉。その気持ち、痛いほどわかります。共に頑張りましょうね!
さあ、残るショーもあと2つとなりました。まずは2シーズン目のパリメンズ参加となる孤高の天才「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」。ここで日本人率がさらに増えました。パリの空港に着いてほぼその足で会場に来た人たちもいて、みなさん分刻みのスケジュール。お疲れ様です!ショーは“DUET”と題し、男女の服を融合したようなスタイルを提案。全てモノトーンカラーで構成し、アイテム一点一点はよく見るとベーシックなのに、大胆な再構築と凝視してもわからないほど複雑な構造に思わず引きつけられます。若手スタイリストの高田勇人さんは「あのスタイリングはすごい。展示会で見てもよくわかんないすから(笑)」と感心していました。ショーBGMはスピリチュアライズド(SPIRITUALIZED)!
本日ラストのショーは「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」。会場はヌケ感が気持ちいグラン・パレです。心地いいフレンチカジュアルを提案した前シーズンから一転し、モノトーンでシャープなスタイルに、ちょっぴりロックなムードを加えてきました。デザイナーのアレクサンドルも少しスリムになったようにも見えたので、今はミニマルに削ぎ落とす気分なのかもしれませんね。さあ、ラストのショーも終わったし打ち上げや!と言いたいところですが、イベント取材はまだまだ続きます。
“BB”はショー会場間しか稼働しないため、ここからは再び自力で移動。「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」のイベント会場へ向かいました。フランス共和国親衛隊の宿舎施設で行われたイベントは、同ブランドが親衛隊のブーツを手掛けて40周年を記念したもの。音楽隊によるパフォーマンスや米歌手のシーラ・Eによるパフォーマンスなど、想像以上に大掛かりなイベントが楽しく、疲れも吹き飛びました。
よーーーやく最後の目的地、「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」初のメンズ単独店の出店予定地に到着。でも9月にオープン予定なので、当然何も出来上がっておりません。ちょっと気が早すぎないかい?と疑問を抱きつつ店内に入ると、飲み放題のビールサーバーやおつまみが豊富で、「居酒屋 マラン」状態(笑)。外では明らかに近所迷惑だろうという爆音で音楽がガンガンに流され、自由って素晴らしいなと感じたパリメンズ初日の夜でした。